牛長屋 - Network2010

鳥屋横町から藪の町

牛長屋

性高院の書院での朝鮮通信使との会談の様子(尾張名所図会イメージ着色)性高院の書院での朝鮮通信使との会談の様子(尾張名所図会イメージ着色)名古屋の幹線道路本町通りを、多くの旅人が往来した。旅人ばかりではない。外国からの賓客である朝鮮通信使も、本町通りを通って江戸に向かった。外国の使節を一目でも見ようと、本町通りに人々が押し寄せた。
朝鮮通信使の主だった高官は、性高院に泊まった。従者たちは、それぞれ寺院に分宿した。
『金鱗九十九之塵』に、次のような記述がある。

明和元申年朝鮮人来朝して江戸通行の時、当府下にては性高院を宿坊と定。長栄寺うら門の辺りに仮家を建て、此所に牛を入れしと云伝ふ。其後其小家をしつらひて、人の住しと也。故にそれより字を牛長屋と呼しよし。

牛長屋の牛は、どういう目的で飼われていたのであろうか。数多くの通信使を描いた絵巻を見れば、牛車として牛を飼っていたのでないことは明らかだ。通信使の一行のなかの料理人が豚を調理している図がある。牛長屋の牛も、使節を饗応するために飼っていたものであろう。

金剛山 長栄寺 本堂. 本堂右手前に蘿塚がある金剛山 長栄寺 本堂. 本堂右手前に蘿塚がある牛長屋は、いつしか人々が住む長屋へと変わってゆく。
長栄寺界隈は、今も昔ながらの閑所が残り、長屋が残っている。しかし、それも今は稀少価値になりつつある。長栄寺の傍らには銭湯があり、高い煙突がそびえていた。しかしその銭湯もいつしか取り毀され、長屋もしだいに姿を消してゆく。

長栄寺という寺号は、織田信秀の妹、小林城主牧義清の夫人である、長栄寺殿槃室栄公禅尼から取って付けられたものだ。
この寺は天平十三年(七三一)、聖武天皇の勅願によって、金光明四天王護国寺と号し、中島郡萩園村に建てられたものだ。神護景雲三年(七六九)には、洪水により堂宇は流失する。弘仁年間(八一〇~八二四)海東郡森山村に堂宇を再建し、寺号も永見寺と改めた。その後も、兵火にあい焼失し、わずかに一草堂を残すだけとなった。
文禄年間(一五九二~一五九六)、長栄寺殿が清須に、この寺を新しく建て、明叟周見を招き、開山とし、寺号を今の名の長栄寺とした。慶長遷府(一六一〇)に名古屋の矢場町に移り、さらに天和二年(一六八二)に現在地に移ってきた。

横井也有の文名を後世に伝える蘿塚横井也有の文名を後世に伝える蘿塚長栄寺境内に蘿塚がある。蘿塚とは、横井也有の文名を後世に長く伝えんとして、弟子の石原文樵が建てたものだ。「也有雅翁」と刻まれた自然石に、つたがからまっていたので、いつしか蘿塚と呼ばれるようになった。この碑は、也有が生存中に建てられたものだ。『鶉衣』の中の「蘿塚の記」を也有は次のように記している。

予も一たびは杖を曳て我と我が名の石に向ふ。是も亦さる因縁のあればにやあらむ。
何にかも人はしのばむなき跡の石に
はかなき名はとどむとも

明和六年(一七六九)、也有六十九歳の時であった。

沢井鈴一氏関連情報

『名古屋の街道をゆく』
定価1500円 好評発売中!

『名古屋の街道をゆく』好評発売中!

名古屋の町を形づくってきた東海道・佐屋街道・柳街道・美濃路・上街道・下街道・飯田街道という七つの街道の歴史、成り立ち、歴史的できごと、そして今も古い息吹きが残る街道周辺の文化財を紹介。
読んで興味津々、町歩きの伴侶となるこの一冊によって名古屋の街道を再発見しながら楽しめます。探索用カラー地図付。

■著者=沢井鈴一(堀川文化を伝える会 顧問)
■発行=堀川文化を伝える会
■体裁=A5判並製、カラー口絵付240頁、地図・古写真等多数収録
■価格=1500円
■内容=東海道・佐屋街道・柳街道・美濃路・上街道・下街道・飯田街道 ほか

取扱書店一覧(名古屋市内)
・ ちくさ正文館(広小路通り 千種駅東)
・ 正文館書店本店(東区東片端)
・ 熱田泰文堂(名鉄神宮前駅前 JR熱田駅前)
・ 三松堂書店(上前津交差点南西角)
・ 早川屋書店(大須ふれあい広場前)
・ 岡田書店(北区味鋺)
・ 三洋堂書店いりなか本店
・ 新開橋店(瑞穂区 新堀川沿い)
・ 鳥居松店(国道19号沿い春日井高校東)
・ ジュンク堂 名古屋店  
・ 名古屋ロフト店
・ 丸善 名古屋栄店
・ 三省堂 名古屋高島屋店
・ 中日書店 中日ビル3階
・ ブックショップ「マイタウン」(中村区 新幹線高架下)
・ 鎌倉書房 サカエチカ店

沢井 鈴一(さわい すずいち)
沢井鈴一1940年 愛知県春日井市生まれ。明治大学文学部卒業後、市邨学園高等学校で国語科を教え、2000年3月に定年退職。名古屋市中区、北区等の生涯学習センター講師を務めるかたわら、堀川文化探索隊代表として長年にわたり堀川文化の地を調査・探索し数多の企画展を実現。著書に『浮世絵は愉しい』『伝えたい-ときめきを共有する教育』『堀川端ものがたりの散歩みち』『花の名古屋の碁盤割』『名古屋本町通りものがたり』など多数。

Webサイト:開府400年・名古屋の歴史と文化