浅間通り - Network2010

沢井鈴一の「俗名でたどる名古屋の町」豊竹小路から地獄谷

浅間通り

浅間通り周辺地図(昭和8年住宅地図)浅間通り周辺地図(昭和8年住宅地図)大須観音通りは、かつては浅間通りと呼ばれていた。浅間神社にちなんで付けられた名前であることは言うまでもない。街路灯も神灯式のものが使われていた。
大須は、昼と夜の顔を持っている。昼間は地方から大勢の人が大須の観音様にお参りにくる。浅間通りには、それらの人たちを相手とする店が並んでいた。

浅間通りの北側には二軒の映画館があった。大須演芸場の前身である港座と、洋画と実演の太陽館である。地方から大須に遊びに来た人たちは、これらの映画館に足を運び、そして、食堂や喫茶店に入った。港座から東に一正亭食堂、パーラー資生堂、桔梗屋食堂、上田屋食堂が軒を並べていた。

地方から大須観音に参拝に来る観光客が、大須に来て先ず食べたいと思うものは、家庭では食べることのできないものだ。洋食が人気の的であった。一正亭は、洋食屋として評判の店であった。
桔梗屋は、うどん屋として古い歴史を持つ店で、いつも千客万来の客で賑わっていた。上田屋は肉鍋の店だ。幾十となく並ぶガスコンロが、いつも青い火を吐き大勢の客の来店するのを待っていた。

賑わうのは食堂だけではない。喫茶店も多くの客で賑わっていた。一正亭食堂と桔梗屋食堂に挟まれたパーラー資生堂は洒落た喫茶店で、地方からの客でいつも混雑していた。コーヒーの香りにふれながら、大須の町の賑わいを、交々話している観光客の姿が目立った。資生堂の姉妹店は、鶴舞公園前にもあった。
喫茶森永は、太陽館の東隣にあった。洒落た明るい感じの店で、カツライスも安くて、おいしいと評判であった。

シャポーブラン大須本店の脇にある名古屋三名水の一つの清寿院の柳下水シャポーブラン大須本店の脇にある名古屋三名水の一つの清寿院の柳下水浅間通りには、大衆的な食堂と喫茶店だけではなく、名古屋を代表する料亭八千久があった。大須演芸場の前の駐車場が、かつて八千久があった場所だ。
港座はもともと南桑名町にあった小屋だ。南桑名町では日の出座と呼ばれていたが、浅間神社の社有地に移転してきて、港川神社にちなんで、小屋の名前を港座と改称した。日活の直営館になったり、戦後はストリップ劇場に変わったり、この劇場の変遷もすさまじい。
太陽館は、鶴舞公園で開かれた共進会を契機として開かれた古い映画館だ。後に古川為三郎の経営するところとなり、現在はその跡地がヘラルドの喫茶店となっている。

喫茶店の前には、名古屋三名水の一つの柳下水がある。
柳下水の特質は、その水が柔らかいことであった。この水でたてた茶は香がよく、茶人から殊の外に珍重された。また化粧水にもよいというので、城中からも女中が水を汲みにきたという。

沢井鈴一氏関連情報

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■著者=沢井鈴一(堀川文化を伝える会 顧問)
■発行=堀川文化を伝える会
■体裁=A5判並製、カラー口絵付240頁、地図・古写真等多数収録
■価格=1500円
■内容=東海道・佐屋街道・柳街道・美濃路・上街道・下街道・飯田街道 ほか

取扱書店一覧(名古屋市内)
・ ちくさ正文館(広小路通り 千種駅東)
・ 正文館書店本店(東区東片端)
・ 熱田泰文堂(名鉄神宮前駅前 JR熱田駅前)
・ 三松堂書店(上前津交差点南西角)
・ 早川屋書店(大須ふれあい広場前)
・ 岡田書店(北区味鋺)
・ 三洋堂書店いりなか本店
・ 新開橋店(瑞穂区 新堀川沿い)
・ 鳥居松店(国道19号沿い春日井高校東)
・ ジュンク堂 名古屋店  
・ 名古屋ロフト店
・ 丸善 名古屋栄店
・ 三省堂 名古屋高島屋店
・ 中日書店 中日ビル3階
・ ブックショップ「マイタウン」(中村区 新幹線高架下)
・ 鎌倉書房 サカエチカ店

沢井 鈴一(さわい すずいち)
沢井鈴一1940年 愛知県春日井市生まれ。明治大学文学部卒業後、市邨学園高等学校で国語科を教え、2000年3月に定年退職。名古屋市中区、北区等の生涯学習センター講師を務めるかたわら、堀川文化探索隊代表として長年にわたり堀川文化の地を調査・探索し数多の企画展を実現。著書に『浮世絵は愉しい』『伝えたい-ときめきを共有する教育』『堀川端ものがたりの散歩みち』『花の名古屋の碁盤割』『名古屋本町通りものがたり』など多数。

Webサイト:開府400年・名古屋の歴史と文化