沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」
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2013年8月2日
沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第16講 上飯田界隈 第1回「川の立体交差──矢田川伏越」
「川が立体交差している」と聞くと、ほとんどの人はびっくりする。道路の立体交差は、あちらこちらで見て知っているが、川のそれは見る機会が少ない。しかし、ずっと昔、名古屋では江戸時代初期から造られており、こちらのほうが本家本元だ。川が地...
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2013年7月26日
沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第15講 福徳・中切・成願寺 第9回「ドンド焼き──六所神社」
火の粉が、空に舞い上がる。紅蓮の炎の中から、神棚に正月中飾ってあった注連飾りやお札が灰となって飛び散ってゆく。 他の地では一月十四日か十五日に行われる左義長が、成願寺の六所神社では十日に行われる。四本の青竹で囲まれた中にうず...
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2013年7月19日
沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第15講 福徳・中切・成願寺 第8回「萩の雨──矢田川堤」
矢田川が安井町の北側を流れていた頃は、堤防には松林がつづき、秋ともなれば萩の花が一面に咲き乱れる名古屋の五十景の一つに数えあげられる名勝であった。 この地に遊んだ文人の俳句を二、三紹介しよう。渡辺沙鷗は、次のような前書きと俳...
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2013年7月12日
沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第15講 福徳・中切・成願寺 第7回「天災は忘れぬうちにやってくる──ふれあい橋」
成願寺を越えて、矢田川の堤防に上り、車が通行することのできない「ふれあい橋」を味鋺にむけて渡ってゆく。矢田川では、渡り鳥がえさをついばんでいる。川原では、すすきの穂がゆれている。のどかな眺めだ。しかし、この矢田川が大雨により堤防が...
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2013年7月5日
沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第15講 福徳・中切・成願寺 第6回「あわれむべし断髪禅衣の像──成願寺」
成願寺は、矢田川の堤防の真下にある。堤防の上を何台もの自動車が走り過ぎてゆく。澄みきった大空に、飛行機が一本の白い線を残して消えてゆく。墓石の林立している中を歩いてゆく。静寂そのものだ。こののどかな成願寺の里も、かつては矢田川の水...
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2013年6月28日
沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第15講 福徳・中切・成願寺 第5回「木霊(こだま)──天神社」
受験シーズンに入って、どの天満宮も大変な賑わいだ。おびただしい数の絵馬には、入学を希望する学校の名前が書かれている。なかには、子どもに内緒で、代理で母親が参拝にきている姿もみられる。 壮大な神域の天満宮でありながら、受験生の...
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2013年6月21日
沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第15講 福徳・中切・成願寺 第4回「漂着の祠──乗円寺」
矢田川が氾濫した時、流れ着いた祠が乗円寺に祀られているという話を聞いた。漂着した祠を神社に合祀するのはよくある話だ。寺に収めるのは不思議な話だと訝しく思いながら乗円寺を訪ねた。 乗円寺の東隣は幼稚園だ。幼稚園との境に、二体の...
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2013年6月14日
沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第15講 福徳・中切・成願寺 第3回「風さわぐ──神明社」
大木が枝をゆるがせて鳴っている。神明社にある何十本もの大木が、強風に吹きさらされ音をたててさわいでいる。風が和(な)いでいる日には、森から一斉に聞こえてくる鳥のかしましい鳴き声も、今日は聞こえてこない。 石段をあがって、社殿...
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2013年6月7日
沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第15講 福徳・中切・成願寺 第2回「花の白雪ふり残る──聖徳寺」
『尾張名所図会』は、聖徳寺を次のように紹介している。 福徳村にあり。天台宗、野田密蔵院の末寺。隣村成願寺は安食重頼、法名常観の菩提寺であるので、安食庄内の本寺で、この寺および中切村乗円寺等、みな常観寺の支院であったが、今は本...
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2013年5月31日
沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第15講 福徳・中切・成願寺 第1回「矢田川の砂──八龍神社」
こんもりと茂った森が見える。あれが八龍神社に違いないと思って歩いていく。福徳・中切・成願寺の三郷地区を歩いていて、鬱蒼(うっそう)とした森が見えれば、まがうことなく神社だ。その土地の守り神が祀られている場所を鎮守の森という。三郷地...