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-インタビューの内容を要約して記事にしています-
愛知芸術文化センター建設構想
鈴木礼治さんが昭和58年(1983)愛知県知事に就任し、最初の記者会見で日本一の文化施設を建設することを 公表しました。これは多分、仲谷知事の時にオリンピックの誘致に失敗したので、それに変わるものとして 出てきたものだと思います。サンフランシスコ講和条約締結記念として栄に愛知県文化会館が建設されました。美術館、ホール、図書館が作られ、三位一体施設と呼ばれました。これにならって日本一の施設を作れと命を受けました。その結果、美術と音楽、踊りなどをコラボした新しい発想の施設を建設しようということになりました。基本計画のなかに美術館、ホール、図書館のほかに文化情報センターを設置することが盛り込まれ 、文化情報センターは、2000年から3年ごとに開催されている、あいちトリエンナーレの母体となっています。
久屋大通とシャンゼリゼ通り姉妹提携締結へ
ただ、これだけの規模のものを名古屋のど真ん中に作るにあたり、土地問題や地元の賛同など問題が 山積していました。桑原知事が先頭に立って、昭和30年代に作られた愛知県文化会館建設の際も、ほとんどの人が反対したことを知りました。きっと今度も反対にあうだろうと覚悟していました。計画を発表すると地元から、すでに黒川紀章氏の設計で超高層のオフィスビルを建設し、地域の発展をはかる計画が進んでいると知らされました。「都心の魅力は文化の魅力」とう格好のよいコンセプトを打ち上げましたが、具体的に何をするのかと地元から問われ、じゃあパリへ行きましょう提案しました。
当時パリは大改造計画が進行中で都心の大改造を行っていました。7大プロジェクトのうち5つが文化・芸術関係でした。みなさんご存知のルーブル美術館、もともと宮殿であったのを半分を美術館、半分を大蔵省が使用していましたが、狭くてしょうがないということで大蔵省を外に出し、全部を美術館に使することになりました。さらにセーヌ川の南側のオルセーの駅を改造して印象派中心の展示をするオルセー美術館を建設、現代美術はポンピドゥー・センターを建設し3箇所に分散しました。パリオペラ座はオペラだけではなく、バレエの公演も行っていましたが、施設の老朽化などもあって、フランス革命の勃発したバスティーユに新たにオペラ・バスティーユを建設しオペラ専用の劇場としてオープンさせ、パリオペラ座はバレエ専門の劇場になりました。都心に芸術・文化の施設をうまく再配置して、年間1億人にのぼる観光客を呼び込んでいます。
我々一行は、鈴木知事のメッセージを携えてパリのシャンゼリゼ商店街を訪れ、日本ではじめて姉妹協定を結びました。日本でもこのような総合文化施設があることをアピールし、末永い友好を誓いました。
パリ訪問
愛知芸術文化センターを作るときに、地元との色々な話し合いがありました。その中でも名古屋の都心栄の魅力は、 何といっても文化の魅力であると説明し、それでパリの大改造計画などの例をあげて了解を取り付けました。 また、パリと友好提携すれば地域全体が盛り上がると考え、名古屋中央通連合発展会(久屋大通発展会)の伊神孝雄会長(セントラルパーク社長)らと 当時の鈴木愛知県知事のメッセージを携えてパリに行きました。そこでは、地域との連携を提言するとともに、この地域で計画されて いる中部国際空港や万博の誘致などのプロジェクトを説明しパリの中心のシャンゼリゼと手を結びたいと提案し、先方もこの提案を前向きに 受け止めてくれました。
われわれがパリを訪問したのは、1989年の4月、ちょうど今(2014年)から25年前のことでした。話し合いは順調に進み、先方から 6月にシャンゼリゼ 委員会の総会に会長と副会長へ参加のお誘いを受けました。
友好提携合意、調印へ
1989年の6月、伊神会長と井上副会長がパリへ向かい、そこで 友好提携の合意にいたりました。それを受けてシャンゼリゼ 委員会の一行が、その年の9月に名古屋を訪れました。 調印前に名古屋の街を見たいということでテレビ塔に上がりました。ボルゴ会長以下、スタッフの反応は大変良いもので、 道路でありながら緑が豊かであることや、路上駐車の車がないのに驚きました。またパリは路上駐車問題で苦労しており、 当時すでに地下駐車場を建設していたことに大変関心を示し、そのノーハウを学びパリの駐車問題を解決したいとの申し出を 受けました。その後、パリでも地下駐車場が建設されこの訪問の大きな成果となりました。こんなこともあって友好提携の調印は、 名古屋市公館で大変フレンドリーに行われました。それを記念して名古屋市公館の道路沿いの庭の一角にマロニエを友好提携記念樹 として植えました。ただ残念なことに最近は、交流が途絶えてますので記念樹の存在も忘れられています。
未来への提言
記念樹から南に下り、久屋橋を渡ると久屋大通公園の北端に入ります。久屋大通公園を名古屋の文化の都市軸にとして、栄を中心とした 地域の魅力を創生する最適な空間であり、さまざまなアイデアを持ち寄って進めていけたらいいと考えています。現在においても、 愛知芸術文化センターを中心に美術館やホールなどが日本全国でも一番いい形で集まっており、 とくに手付かずの状態になっている桜通以北のゾーンをうまく活用することで、さらに魅力的な空間になると思っています。