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- 復元工事着工!
- 玄関復元過程特別公開
- 上棟記念式典
- 玄関・表書院公開
- 対面所・下御膳所公開
- 本丸御殿完成2018年
- 整備担当 若野主幹に聞く
- 魚津源二会長に聞く
- 伝統技術の継承-左官工事
- 金具の製作と取り付け
インタビューの要約
遺構の保護を考えた基礎工事
名古屋城本丸御殿は、昭和20年5月14日の名古屋大空襲で天守閣とともに焼失しました。礎石のみが残されましたが、火災の影響でもろくなっているのと、文化財そのものと言う事もあって移動したりすることも出来ませんので、厚さ約25cmの砂で覆い、その上に建物の荷重を支えるため、コンクリートの耐圧板を打って、新しい礎石を据えてその上に建物を建設しています。そのため、50cmほど昔の建物より高い位置に建てられています。史跡とか文化財は保存することが一番大事なので、現況を変えないというのが原則だといわれています。
ひかり付け-礎石の上に柱を立てる
礎石の上に建物が置いてあるという発想なんです。現在は、礎石と上部をつなぐことが法律で義務付けられています。礎石は自然石なので表面に凹凸があります。そのため柱の底をそれにすり合わせるた「ひかり付け」という工法で宮大工が行っています。1本1本加工し、柱の安定を保っています。
木材調達の苦労
材料としては、秋に伐採した木材が最適です。伐採した材料を野積で数年間保管し、そのあと市場などで業者が購入し水に浸します。5~6年浸した材料を水揚げして丸太を挽きます。丸太を挽いたときに、良材がとれるかどうかは、挽いてみないと分らないことが課題です。設計上は当初の材料と同じ仕様で復元することにしていますので、挽いたときに節があれば、その材が使用できないなどのリスクもあり、材料の調達には随分苦労し時間がかかっています。木曽ヒノキについては地元の業者さんに調達してもらっています。しかし木曽ヒノキだけではこれだけの事業を賄えないので、吉野を始めとする国内各地から調達しています。
伝統的な木材の加工技術
木材の加工については、本来は大工さんの工場などで製作するのですが、今回の工事について名古屋市は技術の伝承を謳ってますので、現場のなかに加工場を設けて市民の方に見ていただきながら作業を行っています。加工の中でも部材と部材をつなぐ「継ぎ手」と木材を直角あるいは斜めに接合する「仕口」など、昔ながらの工法で作業するのは大変です。
一般的な住宅などは直線ですが、しかし御殿や社寺建設などには曲線の部分が出てきます。その曲線を出すには普通の設計図では表現できません。そのため加工場のとなりに現寸場を設け、現寸大の定規を作り、その定規を木材にあてがって製作しています。これもまた大変な作業といえます。
左官工事
左官工事については、土壁を塗って最終的には漆喰(しっくい)で仕上げます。最初の工程は、土壁の骨組みとなる竹の小舞を組む作業です。その後、荒壁塗、斑(むら)直し、中塗、漆喰(しっくい)塗と進んでいきます。今回のように文化財相当の歴史的建造物の作業にたずさわる人は多くありませが、幸いにも当地区にもこの作業を行える職人だいます。
金具の製作
これだけの規模の建物にすべての金具を新たに製作することは始めてのことだと思います。全国を見渡してもなかなか製作できる職人が少ないので、京都と日光の金具屋さんに御教授いただきながら、地元の業者の育成もあって名古屋からも参加していただき1期工事はなんとか終了することが出来ました。3期工事の上洛殿復元工事では、特に豪華な金具が取り付けられますので、これからも技術を磨いてもらい何とか作業を進めたいと思っています。
屋根の柿(こけら)葺き
屋根の柿(こけら)葺き材料は、サワラ材と杉材が使用されています。板材の寸法は、主に長さが1尺5寸(約45cm)、厚みは3ミリ、幅は8センチ以上のものを使用しています。板をずらして重ね、竹くぎで固定してゆきます。3cmの間隔で張ってゆきますので15枚の重なりとなり、4センチ5ミリの厚さで屋根材が葺いてあることになります。板材は塗装などせず、素地のままで委員の方の指導を受けながら、昔と同じ仕様です。何とか30年もつようにしたいと考えています。またその後の葺き替え工事自体が技術の伝承ということもあり、また市民の方に見ていただきながら進めていけたらよいと思っています。
未来を支える人材の育成
若い職人さんが5年ほどで現寸図を書くことが出来るようになり、その会社でも積極的に技術の伝承という提案を受け、大変喜んで取り組んでくれています。木工事や左官工事など地元の方に担当してもらわないとこの地方の技術の伝承は出来ませんし、何十年、何百年先の修理作業においても地元での業者さんに活躍してもらいたいと思っています。城郭建築として国宝第1号に指定された建物の復元を、当地名古屋で行えることを嬉しく思っています。