
加工前と後の飛檐垂木(ひえんだるき)
名古屋城本丸御殿の復元工事が進んでいますが、本丸御殿建築の工事過程には様々なものがあります。本丸御殿復元の1つのテーマでもある「伝統技術の継承」は、この工事過程のなかで着実になされています。このコーナーでは、木工事の様々な行程を映像で紹介しています。
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礎石の据え付け
礎石の据え付けは、位置決めを行い、礎石を固定する作業です。礎石天端(てんば)の 据え付け高さをレベル(計器)を使って確認します。楔(くさび)で礎石の位置と高さを 調整、自然石は表面が一定でないため、中心で高さをを確認します。 礎石と耐圧盤(床)との間にできた隙間(約4cm)のところどころに割石を飼い込み、 割石を芯にして石材固定急結セメントで礎石の隅を固定します。次に礎石の形に合わせ、 鉛テープを型枠として使用し、礎石中央の穴から無収縮モルタルを流し込みます。 養生マットで覆い、湿った状態を保つながら数日間養生した後、型枠を解体します。
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位置決め
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礎石天端の据え付け高さを計器を使って確認
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中心で高さをを確認
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隙間のところどころに割石を飼い込む
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セメントで礎石の隅を固定
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礎石中央の穴から無収縮モルタルを流し込む
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養生マットで覆い数日間養生
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玄型枠を解体し完成
ひかり付け
型板を巻いた柱模型を礎石に乗せ、コンパスを用いて、礎石表面の形状を型紙に写し 取ります。印に沿って型紙を切り取った後、礎石に乗せて型が取れているかを確認してゆきます。 型取りは、柱の外周だけでなく内側についても行います。
木材加工場では、礎石の 形状に合わせ 柱下面を彫る作業が3時間程かけて行われます。
軸組み(表書院)
はじめに軸組みを行います。柱の足元には地覆(じふく)を取り付けます。柱や地覆には ひかり付けが施され、礎石表面の形状に合わせて納めていきます。つぎに、柱と差鴨居(かもい)の 組み立て作業に移ります。柱のホゾ穴に差鴨居をとおし、継手-竿車知継(さおしゃちつぎ)という 継てにより、差鴨居を納めます。これで、柱と差鴨居が納まります。
小屋組み(表書院)
小屋組みは、屋根の形をつくる工程です。太い丸太の小屋ばりの上に小屋束・小屋貫 などの部材を組立てます。小屋貫を小屋束の貫穴に通します。小屋束と小屋ばりとの 仕口(しぐち)は、送り蟻継ぎ(おくりありつぎ)で結合されます。仕口は、部材を接合する部分や 方法を意味しています。送り蟻継ぎは、小屋束先端の「蟻ホゾ」を小屋ばりの「逃げ穴」に 差し込んだあと、「蟻穴」にスライドさせて接合する工法です。引張り力に抵抗する力を増します。
桔木(はねぎ)の取付け
桔木(はねぎ)は、テコの原理を使い軒の荷重を支える役目を果たしています。まず桔木の 支点となる土居桁(どいげた)を桔木に合わせ調整する加工を行います。桔木の先端に ホゾをつくり、その相手となる軒先の茅負(かやおい)にホゾ穴を彫ります。桔木がしっかり 納まるまで、何度も調整を繰り返すと、軒廻りの桔木が取付け作業が完了します。
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軒の荷重を支える役目を果たす桔木
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桔木の支点となる土居桁の調整作業
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桔木の支点となる土居桁の調整作業
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桔木の支点となる土居桁の調整作業
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桔木の先端にホゾをつくる
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相手となる軒先の茅負にホゾ穴を彫り差し込む
野垂木・野地板の施工
野垂木は屋根を支える構造材、母屋(もや)に取付けられます。野垂木の上に、野地板が 取り付けます。野地板は、屋根の下地材で杉板を使用します。
地垂木の取り付け
配付(はいつけ)垂木は、化粧隅木に取り付く地垂木で、化粧隅木にホゾ穴を彫り作り 差し込みます。つぎに地垂木と木負(きおい)を固定、地垂木の木口(こぐち)の長さを調整します。 地垂木の上には化粧小舞が付き、その上に化粧裏板を取付けます。化粧裏板は、軒先の見える ところに使われる部材で、幅30cm厚さ9mmの、ヒノキ材を使用しています。
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配付垂木は、化粧隅木に取り付く地垂木
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化粧隅木にホゾ穴を彫り作り差し込む
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地垂木の木口(こぐち)の長さを調整
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地垂木の上には化粧小舞が付く
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その上に化粧裏板を取付ける
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幅30cm厚さ9mmの、ヒノキ材を使用
飛檐垂木(ひえんだるき)
飛檐垂木は、軒先を見上げた時、きれいに並ぶ垂木のひとつ。まずヒノキの角材に型紙を用いて、 飛檐垂木の形を墨で書き、やや大きめに製材したあと、カンナ仕上げで寸法を整えます。 型枠にはめて、垂木の下面にカンナ掛けしたのち、型枠を替え、垂木の上面にカンナ加工を ほどこします。つぎに、木負接合部分の加工に入ります。墨線に沿って切り込みを入れ、 接合部分を削り落して細部を仕上げます。桔木吊金物の貫通穴を作り、最後に横幅を整え、 最後に角を面取り加工を行います。軒先に現れる部分は、先端ほど細くなっているのが特長です。
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飛檐垂木は軒先を見上げた時、きれいに並ぶ垂木のひとつ
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ヒノキの角材に飛檐垂木の形を墨で書く
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やや大きめに製材
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型枠にはめて、垂木の下面にカンナ掛け
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型枠を替え、垂木の上面にカンナ加工
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型枠を替え、垂木の上面にカンナ加工
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木負接合部分の加工
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接合部分を削り落して細部を仕上げる
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仕上げられた接合部分
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桔木吊金物の貫通穴を作り
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貫通穴に桔木吊金物を挿入
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桔木吊金物で固定された飛檐垂木
鴨居の加工と取り付け
玄関と表書院をつなぐ大廊下の鴨居の作業工程を説明します。まず鴨居と吊束とを固定する ほぞ穴の加工を行います。また、鴨居を固定するための部材篠竹の加工も行います。部材の加工が 終わると取り付けに入ります。鴨居のほぞ穴を、つり束のほぞ穴に合わせ、篠を、つり束の 蟻ほぞ横の隙間に差し込み鴨居を固定します。
根太(ねだ)の加工と取付け
根太は、床板を受ける部材。大引に根太を取付ける仕口の渡り腮(あご)の加工を行います。 床板の下は、礎石、床束、大引、根太の順に組まれ行き、根太を取付けが終わると、床板が 置かれ畳が敷かれて完成します。
破風板の加工・取り付け(中之口部屋)
破風板は、大きなヒノキの板材を使用します。まず、破風板の表面に眉じゃくり(眉形の彫刻)を 行い2本の「眉」が彫り込みます。表面加工が終了すると、裏面に破風板を取り付けるための 加工を施す作業を行い取付け作業に進みます。破風板は入母屋の妻部分に取り付けられます。 拝みと言われる破風板の頂部を納め、最後に仕口部分に落し蟻を取り付け、車知栓(しゃちせん)を 打ち込み固定します。
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破風板は、大きなヒノキの板材を使用
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破風板の表面に眉じゃくり(眉形の彫刻)加工
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2本の「眉」が彫り込まれる
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裏面には破風板を取り付けるための加工
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破風板は入母屋の妻部分に取り付けられる
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破風板は入母屋の妻部分に取り付けられる
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破風板は入母屋の妻部分に取り付けられる
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拝みと言われる破風板の頂部
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破風板の頂部を納める
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最後に車知栓を打ち込み固定
懸魚(げぎょ)
懸魚(げぎょ)は、建物の妻飾りで、破風板の下に装飾として取り付けられる彫刻が施された 板のことです。表書院の懸魚は、三花(みつばな)という形状で、下・左右の3か所に同じ形の装飾が されています。左右に鰭(ひれ)と呼ばれる葉形の模様の装飾が付いています。中之口部屋の懸魚の 中央には、六葉(ろくよう)という飾りが付ています。懸魚は、防火のまじないとして、水に縁の ある魚の飾りを屋根に付けたのが起源とされています。
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表書院の懸魚
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表書院の懸魚は、三花という形状
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下・左右の3か所に同じ形の装飾がされている
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下・左右の3か所に同じ形の装飾がされている
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左右に鰭(ひれ)と呼ばれる葉形の模様の装飾が付く
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中之口部屋の懸魚
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六葉(ろくよう)という飾りの加工
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六葉(ろくよう)の取り付け
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懸魚は、防火のまじない
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魚の飾りを屋根に付けたのが起源とされる