
愛知万博最終日風景と井内摂男中部経済産業局長
2005年に開催された愛知万博から10年の節目の年を迎えるにあたり、愛知万博の理念や遺産を将来にわたりどのように継承して行くかを、さまざまな立場からお聞きする企画です。第1回目として、愛知万博に経済産業省から派遣され現場で活動された井内摂男 中部経済産業局長にお聞きしています。
シリーズ愛知万博10周年 索引へ
動画
【動画】シリーズ愛知万博10周年No.1 井内摂男 中部経済産業局長に聞く
-インタビューの内容を要約して記事にしています-
愛知万博での活動
2001年の1月から2003年の7月まで国際博覧会協会に経済産業省から派遣されました。2000年の12月だったと思いますがBIE(博覧会国際事務局)への登録が終わって、これから中身をどうやって作るかという段階でした。いろんな地元の調整とか、あるいはプロデューサーを会長、事務総長を補佐して選んだり、基本計画を作ったりということを行いました。当時はまだ万博に対して懐疑的な見方をする人がいたり、環境配慮に対して懸念をする方がいらっしゃったりして、そういう方たちの話し合いとか調整などに当たりました。
万博に関わる方は、もちろん地元が中心で愛知県、名古屋市、開催された市町村、瀬戸市、長久手町(現在長久手市)、豊田市、それに周辺の三重県、岐阜県の自治体の方たちもおりました。国の官庁からも様々な省庁から派遣されていました。産業界もいろんな業界から来て、みんなで博覧会をどうやって準備することをやっていました。正直申し上げて文化が違うものですから、仕事のやり方とか言葉とかが全然違いました。それをどう組み合わせるか調整するかに苦労しました。私が赴任して2ヶ月経った頃に、あまりに文化が違うので出身の違う部長さんたちと飲み会を行いました。それでお互い気心が知れるようにな形にして、それ以後はコミュニケーションが良くなったと思います。
テーマへのこだわり
「自然の叡智」という崇高なテーマを掲げました。これを掘り下げて行くと、どういう事になるかということを色々な形で具体化して行きました。そのなかにはどうやって自然と共生しながら産業活動あるいは社会活動を行ってゆくのが大きなテーマだったと思います。会場をつくる建設そのものも、なるべく地面を傷めないとか、大造成を避けるとかといった配慮もありましたし、エネルギーについても再生可能エネルギーをなるべく取り入れて実験を行ったり、燃料電池自動車の運行など様々な取り組みを行いました。また常温の超伝導リニモも開通して万博会場への重要な足になりました。これも一種の社会実験だったと思いますし、現在も活躍中ということを嬉しく思っています。建設が始まったリニアモーターカーについては、中部地域を日本の真ん中として、一層ハブにする効果があると思います。もともとこの地域は交通要衝で、ますますその効果が高まると思いますので、人の交流、企業の交流、経済の交流など色々なものが活発化することは良いことだと考えています。
中部地区の産業活性化への取り組み
この中部地域というのは東海も北陸も日本経済のなかで中核の地域です。自動車産業、工作機械、これからもっと拡大しようとしている航空機とか、北陸では製薬産業など非常に元気のいい産業が沢山あります。こういった産業の国際競争力をもっと高めて行くためには、いろんな技術開発とか、裾野の中小企業を含めた人材育成とかいったものが大事であると思っています。またそのような産業をどうやって国際的に売り込んで行くのか、海外投資、輸出、海外からの投資の呼び込みなど頑張って行きたいと思っています。同時に大事なことは、こういった産業を守ることが大事で、震災を含めたいろいろな災害に対する対応、防災とか災害を減らす減災に対する活動は普段からしっかり行っていくつもりです。
<グレーター・ナゴヤ・イニシアティブについて>
2004年、名古屋を中心に半径100㎞圏の愛知、岐阜、三重等に広がる広域経済圏に おいてグレーター・ナゴヤの統一ブランドのもと情報発信し、海外からの投資や技術、人 材を呼び込む活動を開始。2006年、自治体、経済界、中部経済産業局等が協議会を設 立。現在は、対日投資促進に加え海外への事業展開を促進する双方向の経済交流を推進。
未来へつながる愛知万博の遺産
ますます時代が自然との共生、自然の知恵に学ぶことを重視し始めていると思います。その意味では2005年に「自然の叡智」をテーマにした万博を行い、世界にこういったやり方があることを発信した事は、非常に大きな意味があったと思います。この地域にとっても初めての大きな国際化の事業だったと思っています。私は1970年の大阪万博の時は、関西で小学生だったんですが、何回か万博へ行って世界の多様性や広さを知りました。愛知万博が愛知を中心とするこの地域の子どもたちにも、そういった体験が出来たとしたら日本のとっても非常に大きな財産になっていると考えています。
愛知万博会場
より大きな地図で 愛知万博 を表示