生物多様性キックオフシンポジウム
生物多様性条約ジョグラフ事務局長 記者会見
― COP10成功におけるの愛知県、名古屋市および地方自治体の役割について
今回の会議にかかわらず、中央政府の参加とともに会議を開催する地方自治体の関わりや参加責任が成功を決める大きな鍵であるといえます。
愛知県、名古屋市に期待するところが非常に大きいということです。
先ほどのパネリストがおっしゃっていたように、ただ地方自治体だけではなくその地域に住むすべての方たちの参加があってこそ始めて会議の成功があると思います。また単に愛知、名古屋の地域だけではなく日本各地の方々の参加も成功の大きな鍵になると考えます。
例えば、2年前に会議を行った際にもいろいろな地方の市長さんや議会関係者も参加され意見を述べ、また貢献していただきました。いろいろなことを学んで帰っていただくことが必要であろうかと思います。
これが、新しい時代の会議のやり方でありまして、すべての利害関係者が参加し、そこで情報を共有し理解を深めることが非常に重要なことだと思っています。
左から2人目が生物多様性条約事務局長 アハメド・ジョグラフ氏― COP10への「ものづくり」のかかわり方
このことに関しても市民の役割が大きいと思います。
なぜなら、会社が製品を作っても買うのは一般の市民であるからです。
一般の市民が充分な環境に対する教育を受けていなければ、作る側としては環境のことを気にしない、環境にダメージを与えるような製品を作り続けるでしよう。
それゆえ、買い手である、われわれ市民に対する意識を高める教育が重要になってくるわけであります。
日本の企業でもグリーンテクノロジー、環境技術に対して投資をしていると聞いていますし、前回の会議が行われたドイツにおきましても日本と同じように製造業が盛んであり、また製造製品を輸出している国ですが、17%はグリーンテクノロジーをベースにした製品であると聞いております。
さらに、2020年にはその比率が50%になると期待しています。
環境をベースにした新しい技術に投資し、それで作られた製品を国が輸出するといった方向のソリューションを、日本の中でも「ものづくり」がさかんな名古屋で意識していただくためにも市民のみなさんへの教育が大切になってくるかと思います。
― 遺伝子操作への考え方
新しい技術の出現につきましては、過去にも自動車が出来た時、飛行機が飛んだ時、汽車が走った時など人々は新しい技術の出現を恐れたものでした。
バイオテクノロジーに関しても、人々の見慣れていないものに対する恐れは理解できます。
1992年のリオのサミットにもおいてもバイオテクノロジーを人間と環境にきちっと経緯をになったうえで使用することは、人間と環境に多大な貢献ができるのではないかという認識が示されています。そのような技術を人間や環境に、安全にどのように使っていけば、よりよい方向になるのかは、カルタヘナ議定書の作成過程で議論されています。そういった方向で議論することを私としても推奨したいと思っています。
生物多様性条約事務局長 アハメド・ジョグラフ氏 - アルジェリア国外交官として勤務した後、1996年より国連環境計画(UNEP)本部で地球環境ファシリティーを担当。その後、2006年1月から現職。― COP10開催へ向けた今後の取り組み
今後、一連の自治体および日本政府との会議が東京で明日(2008年6月15日)から始まります。そのなかで9月の東京での会議では、ロードマップを明確化してゆきたいと考えています。すでに準備作業は始まっておりまして、2回会議を行っています。
今後、一連の自治体や日本政府との話し合いのなかでCOP10の骨格が具体的になって行くと考えています。
ただ、日本のみなさん、日本政府がどのようなことを名古屋の会議で達成したいのかを非常に重要視したビジョンになるのではないかと思います。
当然ではありますがヨハネスブルグのコメントのなかでも出てきました、2010年までに生物多様性の損失速度を半減させるといった公約もあり、もちろん、それを達成する事を確認する会議でもありますが、それだけではなく今現在何をやり、また今後2020年に向けて何をやって行くのかということが、 COP10の名古屋での会議における主要な使命であると考えています。
COP10では名古屋プロトコル、名古屋議定書という名前のついたものが最終的に生まれるのではないかと思います。
たとえば、遺伝子を操作したような製品についての問題や懸念などもCOP10では話し合われるでしょうし、また環境に害のある製品を作った企業は罰せられ、その責任を問われるといった議題についても討論されるでしょう。
さらに、ベネフィットシェアリング、アクセスと利益配分をどのようにするのかといった議論もおこなわれると思います。
気候変動の条約がらみでは京都議定書により、京都を冠した名前が今後も残って行くわけですが、その意味で生物多様性条約においては名古屋という街の名前を冠した歴史に残る議定書ができると思っています。