蒸気機関
解説:産業技術記念館 島田紀彦 元館長
以下の文章は上の動画の解説を書き起こしたものです。
産業技術記念館の場所は豊田佐吉が起こした豊田自動織布工場に起源がありますが、その豊田自動織布工場には蒸気機関がありました。その蒸気機関で工場を動かしました。最初は直接動力を取り、途中から発電機をつけて工場を動かします。その機械がスイスのスルザー社の製品でした。
開館したときに蒸気機関というのがこの工場の原動力であったし、産業の原動力として蒸気機関はたいへん重要であるという両方の面から、ぜひ同じ型の蒸気機関を据え付けたいと思い、開館以来探していました。ところが同じ型のものはもう見つからなくて、前のものよりもむしろ大きい型のものなんですが、同じスルザー社製のたいへん状態のいい蒸気機関がドイツにありましたので、分解をして輸送して、オーバーホールをして、組み付けをして、展示をする展示室をつくりました。
中庭の壁に残るシャフトを通した跡今回の展示室に近いところの端にその蒸気機関がありまして、その隣にボイラーがあって蒸気を作って蒸気機関を動かしました。
一番最初はシャフトを直接回して、(工場の壁の穴からシャフトを)工場に入れて、革ベルトで機械を動かしていました。その後、外から供給される電力が不安定なので発電機をつけて発電した電力でモーターを動かして機械を動かしました。
日本でこのような蒸気機関はほとんどありません。あっても動かないですし、ほんとうに小さいものが動いているのを見たことがありますが、それ以外で多分日本で最大規模で実際に動く蒸気機関だと思います。
朝一番のメンテナンスで200箇所くらい油をさして、それから実際動かす段になると油のポットの栓をあけるなど、メンテナンスが大変です。
産業の原動力というのはまず「動力」、それからコントロールする「制御」、この2つです。特に繊維機械館をご覧いただくと動力の変遷、制御の変遷のコーナーがあります。動力の変遷のなかで蒸気機関が産業革命を動かしてゆくうえで大変おおきな原動力になったということで、日本はもちろん世界における産業の原動力の意義は大きいと思います。