「農都共生社会」について語る 加藤梅雄 長久手町長― 長久手町の概要
やはり長久手というと「小牧・長久手の戦い」と、どなたもおっしゃって純農村的な面が多かったんですが、博覧会(愛知万博)という巨大で世界的なイベントが開かれまして、変わりましたですね。世界中の人がこの町を訪ねてきたということは、今までなかったことですし、すごいことでございましたね。世界で初めてといわれる乗り物(リニモ)が藤が丘(名古屋市)から八草(豊田市)までひかれたのは、万博のおかげだと思います。
長久手町内には4大学ございますし、周辺を入れますと10大学近くありますから、「小牧・長久手の戦い」という歴史的な遺産プラス文教都市としての性格がグッと最近は出てまいりました。都市的な発展と農的な発展、「田園バレー事業」とわれわれ言っておりますが、そのコラボレーションが非常にうまくいっています。
―「田園バレー事業」が目指す「農都共生社会」
長久手農学校での実習作業風景「市・ござらっせ」に並ぶ農産物人口増加がその町の発展のバロメーターだと言われていた時代がありました。長久手町は都市と農村とがうまく絡み合う「農都共生社会」というのが、私はこれからの発展の大きなキーワードだと考えています。田園地帯はできるだけ残して、都会で仕事をしてる人、住んでる人が休みの日には大いにホリデーを楽しんでいただこうと。それを実現するのは「農都共生社会」であると思います。農ある町、農あるくらしを、(まちづくりの)中に入れてゆくことで「田園バレー」という名前をつけて農的発展をはかりました。
「ほんとうに住んでよかった、ここに」という町が理想ですね。そうすれば必ず文化であろうとスポーツであろうとすべて良し。「生活がよければすべて良し」ということになりますので、そんな町になることを夢みています。
長久手町ガイドマップ
田園バレー事業(農都共生社会への取り組み)
長久手町は、名古屋市と接する西側が市街地として開発が進む一方、東側は昔ながらの田園風景が広がっています。新興住民が多く住む西側と昔からの住民が住む東側の交流を促進し、また農家の高齢化や担い手減少による遊休農地の増加を防ぐため、長久手町は農業を活用したまちづくり「田園バレー事業」を行っています。
田園バレー事業はふれあい農園「たがやっせ」、長久手農楽校、農産物直売所・田園バレー交流施設「あぐりん村」 、これら3つの事業を中心に行われています。
ふれあい農園「たがやっせ」(市民農園)
ふれあい農園「たがやっせ」2002年初春、市民農園が整備されました。家庭菜園や趣味的に農にふれあいたい利用者を公募したところ、町内都市部に住むシニア層を中心に、多数の応募がありました。利用者は1区画(30㎡)年間6000円(現在は10000円)の利用料を払います。当初、地元の農家からは「金を払ってまで農業をする人がいるのだろうか」と疑問の声が聞かれましたが、募集の結果、定員枠の2倍近い応募者がありました。
市民農園には、レンタル区画とは別に入口付近にモデル農園があり、地元農業経験者などからなる「たがやっせサポートクラブ」が栽培管理を行っています。このモデル農園では季節ごとに栽培講習会も開かれています。
長久手農楽校
長久手農楽校 実習風景農への関心の高まりを受けて、本格的に農業をやりたい人を対象とした農業の学校、長久手農楽校が2004年の7月に開校しました。年間約30名の受講生が週1回(夏季は週3回)の農場実習と月1回の座学を受けています。講師は愛知県農業試験場OBや地元の農家の方々が行っています。
農産物直売所・田園バレー交流施設「あぐりん村」
生産者もPOPや写真で消費者と直接コミュニケーションしている都市と農村が「食」と「農」を通じて交流する、田園バレー事業の中核施設として「あぐりん村」は2007年4月に開村しました。「あぐりん村」は農産物直売所、薬膳レストラン、パン工房、ふれあい農園で構成されています。
あぐりん村の中心となるのは、農産物直売所「市・ござらっせ」です。長久手町やその周辺の230軒を超える農家が持ち寄った、安全・安心かつ新鮮な野菜類が販売されています。約350㎡の売り場に所狭しと並び、1日1000人近い買い物客が訪れています。
「市・ござらっせ」は、少量の野菜しか作っていないため市場に出しにくかった既存農家に売り場を提供するとともに、田園バレー構想によって新たに農業に取り組むようになった新規参入者の売り場にもなっています。自給的生産で減退していた既存農家の生産意欲を引き出す一方、新規参入者にも農業を定着させる工夫が行われています。
長久手町警固祭り
「長久手町警固祭り」は馬の塔(オマント)と、その馬を警固する棒の手隊、火縄銃を持った鉄砲隊で構成されています。
馬の塔(オマント)は、尾張・西三河で行われる代表的祭礼習俗のひとつです。標具(ダシ)と呼ばれる札や御幣を立て、豪華な馬具で飾った馬を社寺へ奉献する祭礼です。
棒の手は愛知県の代表的な民俗芸能の一つで、「長久手の棒の手」は昭和31年6月21日に県の無形民俗文化財に指定されました。二人の男子が向かい合い、威勢良く声を上げながら棒で打ちかかります。
長久手町には、景行天皇社・富士社を氏神とした「長湫の馬の塔」、石作神社を氏神とした「岩作の馬の塔」、熊野社・神明社・多度社の3社の氏子たちが合同で行う「上郷の馬の塔」があり、3つの地区に分かれて実施されています。
万博会場の変遷
2005年3月25日から9月25日までの185日間、21世紀最初の国際博覧会「愛・地球博」が、長久手会場を主会場として開催されました。125の国、国際機関が参加し、国内外から約2205万人の来場者を迎え、大きな成功をおさめました。
“環境万博”とも呼ばれたこの博覧会では、会場計画から開催後の撤去に至るまで、自然環境や近隣住民の生活環境への配慮を重視し、環境アセスメント(環境影響評価)が実施されました。
下の動画を見ると開催中は駐車場だった場所が、再びもとの農地へ復元されるている様子がご覧いただけます。
リニモ(東部丘陵線)
リニモは日本初の磁気浮上式リニアモーターカーです。豊田市の八草駅から長久手町を横断し、名古屋市藤ヶ丘駅まで、8.9kmの区間を運行しています。この区間には、新興住宅地や大学・研究機関などが並び、地域住民や通学する学生の貴重な足となっています。
愛知万博の会期中は名古屋市の地下鉄、愛知環状鉄道と万博会場を結ぶアクセス路線として活躍し、“動くパビリオン”とも呼ばれ人気を博しました。
トヨタ博物館
トヨタ博物館は、100年間の自動車文明の業績を世界中から収集、保存し、体系的に展示しています。1989年(平成元年)4月にオープンした本館の展示では、ガソリン自動車が誕生した19世紀末から20世紀の自動車の歴史を、実用車を中心に約120台 (2階欧米車、3階日本車)の車両により、体系的に展示しています。 1999年(平成11年)4月にトヨタ博物館開館10周年を記念してオープンした新館は、日本のモータリゼーションの歴史を、人の暮らしと生活文化との関連で捉え、暮らしと自動車の関わり合いについて展示しています。展示されている車両は、専門のスタッフにより定期的に整備され、走行可能な状態になっているのが特徴です。