沢井鈴一の「名古屋の町探索紀行」第7講 下飯田の昔 第5回「天王社」

天王社

観音寺の門と天王社

観音寺の門と天王社

観音寺の門前に小さな社が祀られている。愛知県の各地に見られる、津島神社から勧請した牛頭天王を祀る社だ。流行病にかかったら一家全滅、村中全滅となってしまう。牛頭天王は流行病から人々を護る神として崇拝をうけた。

村を病気から護ってくれる天王社が最もにぎわうのは、七月十八日の天王まつりだ。観音寺の前には、わき出る水で一つの池ができていた。その池の中には、櫓が組まれている。櫓の上には提灯が幾つも揚げて飾られている。地には橋が架けられ、櫓に建てられた提灯山の下に行くことができるようになっている。

子どもたちにとっても、天王まつりは楽しみな行事だ。

「麦の収穫が終わっており、新しい麦藁に赤、紺、黄、青、白の紙を細く切って作った馬簾(ばれん)(厚紙を細長く裁ち、まといの飾りとして周囲にたれ下げたもの)を差して前後左右の四人で担ぎ、棒に綱をつけて引くのです。先頭に提灯を持った子供が先導し、次いで馬簾、その後に村の子供が鉢巻きをして後に続くという賑やかで勇ましい隊列がくるとイタチやタヌキ、キツネも息を潜めます。(谷口宰『古里下飯田』)

子どもたちが村の中を練って歩いている様子がよくうかがえる文章だ。

天王社。津島神社から勧請した牛頭天王を祀っている

天王社。津島神社から勧請した牛頭天王を祀っている

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